皆さんの周りに、どれくらい「日本」があるでしょう。

お米やお味噌汁を食べていますか?

あなたのお家には、畳みのお部屋和室はあるでしょうか?

着物を一人で着れますか?茶道、華道など日本文化に触れていますか?

「はい」と即答できる人がどれほどいるのでしょう。

色んな方向から、どんどん日本が消えてしまいそうな危機感が年々強くなると感じているのは私だけでしょうか?何とも奇妙な違和感に、皆いつの間にか慣れてしまう。それが一番怖い事。違和感を「違和感」として、なぜそう感じるのかを大事にしていただきたいのです。

オリンピック2024フランス大会を取材した番組の中で、フランスの柔道家の方の言葉にハッとしました。

フランスでは柔道がとても盛んです。それは、「礼に始まり礼に終わる」という相手への敬いや礼儀を大事にしていて、小さい子がたくさん学んでいました。小さいうちは競争はさせず、ただただ楽しく学ぶことに重きを置くのだそうで、やがて思春期になり本当に勝ちたい気持ちが芽生えてから、勝ち負けにこだわった教育に変わるのだそうです。きちんとした人間構築、礼儀作法。ぶれない軸を持ち、相手を思いやる優しさを兼ね備え、心身を鍛える柔道。かつて日本人が当たり前のように神と生き、畏れ敬って培っていた姿が、日本にはなくなり、フランスには今も大切に息づいている。

なぜ私たちは大事なものを手放してしまったのでしょう。

いつも当たり前にあると思う傲慢さが、あっという間に大事な文化を消し去っていく。大げさではないと私は思います。

この度、このままでは日本が消えていく。そんな思いから次の世代に伝えるための「二畳で出来る日本文化」可動式茶室「野点の間」を残すことに致しました。ここでは、この茶室を作った思いと、お披露目会「こけら落とし」の様子をお伝えしてまいります。

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可動式茶室「野点の間」

発案はいつもコンサルなどでお世話になっている方から、”こんな移動式の茶室があるんだよ”と一枚の写真を見せていただきました。そこには四畳半の組み立て式の野点用の茶室が写っていたのです。コロナ禍でなくなってしまったお茶会を何とか外で出来ないか?とのご相談で、出来上がったそうな。

お茶を知っているものとしては、組み立て式に驚きました。

また、この話を頂いたころ、丁度私自身も鎌倉にある、お家元のところへ、教授職のお試験へ行ってきたばかりというタイムリーなお話でした。そのお試験は畳二畳で行うことをコンサルの彼女に伝えると、「二畳!!」と何やらひらめいたようで、そこから”二畳で出来る日本文化”構想が生まれたのでした。

制作は新潟を代表するこちらの方々に、お力をお借りしました。

こけら落とし <会場>桐子モダン様内

こけら落としは、2024年6月に開催。可動式茶室野点の間は加茂のイシモク桐子モダン様の制作。

設計は神田陸建築設計事務所の神田陸様

新潟県を代表する、2社のお力をお借りできたことも奇跡でした。

そして、私のふるさと加茂を舞台に、加茂を代表する「桐」で出来たこの野点の間のお披露目となりました。

”日本文化は敷居が高い”とよく言われます。

例えば

①着物を自由に着たいけれど、決まり事も多く難しそう。

②お抹茶は好きだけれど格式が高く、費用もかかる。

③日本文化を習得するのに、時間とお金、労力がかかる。

などなど、興味があってもなかなか覚悟がいるのではないでしょうか。その高くなってしまった敷居を、ぐっと低くしたかったのです。だからといって雑な適当なものになっては本末転倒。カジュアルであってもそこで感じる「和」の世界は”本物”を意識したかったのです。それがこの可動式茶室なのです。

お客様の声

この日ご来場くださいましたお客様の、嬉しいお言葉を少しご紹介いたします。

30年以上昔に一度、お茶室で茶を頂いたことがあったが、久しぶりにいい時間を過ごさせていただきました。茶室の説明に小さな躙り口から部屋に入るのは、どんな偉い殿様も頭を下げないと入れないようになっている、と前に聞いたことを今日思い出しました。この空間は特別ですね。と、目をキラキラさせたすてきなご夫妻にこちらの方が心温まる思いがいたしました。

はじめて茶道体験をされた若い方々も、この特別な空間、畳みの間に正座してお茶を頂きながら眺める景色は、いつも眺めている景色ではなかったようで、「ホッとしますね」と非日常を楽しんでくださいました。心が落ち着く。もともと日本人が大事にしてきたものをここで感じていただけたのではないでしょうか。若い方々は知らないだけで、感性は持っています。大人たちが壊してしまわないよう、大切に繋いでいきたいものです。

三畳という小さな空間ではありますが、お話をするにはちょうど良い空間でした。また、これだけ近くでお点前が見れるのもここだけでしょう。お点前する側はなかなかのプレッシャーを感じながらの、初めての茶会。こけら落としにハプニングはつきもの!!!実はこんなことが起こっておりましたよ(笑)

ハプニング大賞!頭真っ白!

一瞬、何が起こったの?

絶句!とはこのこと。お点前の途中でお茶をひっくり返してしまったのです!!!最悪~!

どこからどう手を付けようか…。とりあえず山盛りになっているお茶を懐紙ですくいお茶碗に。あとはトントンたたいて畳の目に入らないようにしながら、掃除機をお借りして、少し緑色が薄く残ったものの、何とか綺麗に復活させることが出来ました。スタッフの皆様ありがとうございました。

この大惨事に「写真撮っていいですか?これも記念に」と、カメラに収めてくれた今回すばらしい写真を撮ってくださいましたカメラマン荒木秀暢さん。今回荒木さんの出来上がったお写真をみて、写真で私の思いを表現していただけた!私の背中からストーリーを感じたのでした。どれも美しく、人としての物語を感じ、語りかけてくる作品の数々に心から感謝でした。これもこの茶室が繋いだ奇跡のご縁でしょう。ありがとうございました。

結果自然成(けっかじねんになる)

今回選んだ短冊は「結果自然成」。これは禅語ですが、実はこの前に「一華開五葉」(いっかごようをひらき)という言葉に続く対句なのです。

解釈は色々ございますが、

一つの花が5つの葉を開いて、その実は自ずと成就する。

つまり、目的に向かって日々たゆまぬ努力を続ける人には、必ずそれ相応の結果が現れる。その結果はまるで季節が巡れば自然に果実が熟すように、人間の思惑や計らいを離れたところで成就する。

このような意味があるようです。

「天はみてござる」ですね。このお言葉に出会った時、これは必然と感じ、すぐに購入。私の生き様とリンクした大切な短冊となりました。

今回のハプニングも含め、全てが神様のお導きを強く感じました。

和文化を伝えていくことに背中を押されたような、大事なお役目を頂いたような思いだったのです。茶人としては私はまだまだ未熟者です。ですがだからこそ感じる皆様との距離感を大切にしたいと思います。私と話すことで、一人でも多くの方が、失われていく日本の結界に気づき、日本を強く感じていただけたら幸いです。これからも大切な日本、美しい日本の心を、この可動式茶室と共に伝えていけたらと思います。

ともに活動していただける仲間を待っています。あなたのお力をお貸しください。

人生は有限。大切なあなたが幸せでありますように。今この時を大切に生きてまいりましょう。

最後までご覧いただき心から感謝申し上げます。

なでしこ和美人越後 前山豊子