芸術文化への理解とモラル
近年のニュースで、由緒ある仏像が盗まれてネットオークションなどに出品されたり、歴史的な建造物に落書きをしてあったり、文化や芸術の価値を理解せず、平気で傷つける人が増えています。
こうした出来事を見聞きするたびに、一部の日本人の芸術文化への理解のなさに愕然とし、また、これが今の現実であると改めて思うのです。
私は海外に行ったことはないのですが、海外の有名な美術館でも、日本のようなロープを張ったり厳重な警備をするのではなく、もっと皆が芸術を身近なものとし自然に大切にしているのだそうです。いったことがある方にはお分かりいただけるかもしれません。
本当に大切に思って行動している方、つまり「本物」と言われる方は”モラル”を大事にされています。
ルール・マナー・モラルの違い
ルールとは
ルールは決まりごと。全員が基本的には最低限守らなければならない約束事です。
守らなければ社会秩序は乱れ、生活が出来ません。約束事を守らないものには罰則もあります。
大勢の人が生き、集団生活を行う上で大事な約束事、それがルールです。
マナーとは
マナーとは、たとえそれをやらなくてもルールのような罰則規定はありません。ただ、マナーを守らない人は信用を失うかもしれません。
マナーは、「相手を不快にさせない」ことを大切にします。形だけマナーを守っても、そこに思いやりの心やおもてなしの心遣いがなければ意味がありません。
マナーとは、ルールとは違う「決まりごと」を身につけることで、その方の品格、人格を高めてくれるある意味”鎧”(よろい)のようなものだと私は思っています。
モラルとは
モラルには、ルールやマナーのような「決まりごと」はありません。
モラルとは「道徳」「倫理」のこと。
その方が生きてこられた人生観から生まれる常識的感覚であり、ひとり一人違っていますのでとても難しいものですね。この「モラル」が芸術文化にはとても大切になっているのです。モラルがなければ、あっという間に文化は消えてなくなるのかもしれません。人が人として生きていく中で、道徳心がなければ恐ろしい時代になることは、皆様も近頃のニュースからも感じとれているのではないでしょうか。
芸術はこころの栄養
日本には風情あふれる芸術がたくさんあります。後世に残していくべき文化、芸術がたくさん。
芸妓さんたちの粋な遊びや芸事も、それを本当に理解する人が少なくなっていることも事実。
芸事は目の肥えたお客様がいてこそ育つのだそうで、それだけ「本物」に触れる機会がなくなってしまったと言えるのかもしれません。
茶道、柔道、華道など「道」のつく世界に触れることを私はおすすめしたいです。
お着物で過ごすことも、私はある意味「着物道」だと思っております。
一見、贅沢品で生活になくても困らないものかもしれません。ですが、「道」に触れ、心の安定と豊かさをもたらす重要な役割があるものなのです。
私たちはどんな人にも「良心」はあり、100%の悪人はおりません。
それは、私たちも「神」の一部だから。どんな人の中にも、「神」が宿っているはずなのです。
美しい景色を見たとき心が晴れやかになるのはなぜでしょう。
動物や愛情ある姿に感動し涙があふれるのはなぜでしょう。
誰かにこの時は感動し泣くものです!なんて習ったのでしょうか?
いいえ。生まれる前から知っていたからこそ、そのシーンに「真・善・美」神を感じたましいが震えるのです。もともと未熟者だから今この世界で生きていて、惑わされながらも信念をつらぬく強い心を育んでいる。それが現世。
厳しい出来事ほど自分を磨くありがたいことなのだと、感謝する心さえあれば、なにも怖がることなどないのです。
残念ながら、着物文化も衰退し、後継者不足も深刻です。こころの栄養が切れてしまっては、人は誤作動をおこしてしまいます。日本の伝統文化は日本人の心の文化です。「結界」とも感じております。
荒れ狂う自然界の猛威も、様々な事件も、みんな地続きのなかで起きている。このままではいけないと、誰もが感じているのではないでしょうか。
物質で心はけっして満たされることはありません。
心が元気になるには「愛」です。お金では買えないもの、目には見えないものの中にこそ、本当の幸せはあるものだから…。
「道」の世界は人生哲学。あなたの人生をきっと豊かなものに変えてくれると思います。機会がありましたら是非芸術文化に触れてみてくださいね。
日本の心、日本の宝を皆で守っていけますように。
今日も素晴らしい一日を。
いってらっしゃい。